【マーケティング】顧客心理に基づくマーケティング手法「返報性の原理」
こんにちは、中小企業診断士の諸岡です。
「顧客心理に基づくマーケティング手法」シリーズ、本日は「返報性の原理」について。
これは誰にでも絶対に当てはまるとは言えないかもしれませんが、概ね、人は何かをしてもらったらお返しをしなければという心理が働く生き物です。
X(旧Twitter)で「いいね!」のボタンを押されたら、その人に「いいね!返し」をしたくなりませんか?
様々な交渉のシーンにおいても、この返報性の原理が活用されていることがよくありますので詳しく見ていきましょう。
返報性の原理とは
冒頭にてご紹介しました通り、返報性の原理というのは「人間がもつ、他人に何か施しを受けた場合、お返しをしなければという心理が働く」というものです。
飲食店やスーパーなんかで、ものすごい丁寧かつ親切に対応をしてもらった場合、思わず買っちゃったということってありますよね。
逆に、そこまでしてもらっておいて買わないということもよくあるかとは思いますが、「申し訳ない」という気持ちにもなりますよね。
世の営業というものは、わりと返報性の原理にかけた働きかけが多いような気もします。
「これだけやって差し上げたのだから買ってもらえるであろう」という気持ちって、営業している人にとってはどこかしら頭の片隅にでもあるのではないでしょうか。
ただ、注意しなければならないのは、この返報性の原理というのは「相手に申し訳ないという思いをさせている」という点を忘れてはいけません。
お客さんにとって気持ちの良い買い物をしてもらう上で、返報性の原理という観点に立つと、「申し訳ないから購入する」という気持ちにさせているということも事実かもしれません。
解釈は難しくもありますが、時としてこの原理に立つと顧客が下手にでている状態でもあるともとることができることは知っておくと良いかもしれません。
製薬業界における返報性の原理
私が前職で営業(MR)をしていた製薬業界においては、本来は自社の薬の情報提供と処方の提案が主な営業手法ではありましたが、実際はそれだけではありませんでした。
医療従事者からは様々なご要望があったりして、情報提供活動以外の「人として評価してもらうための貢献」という活動を行っていたことも事実です。
あまり大きな声では言いにくいですが、私自身もお遣いに走ったこともありますし、ご家族の旅行プライの立案もさせて頂いたこともあります。
これらの活動をしている際、正直な心の内を言ってしまうと、「これだけ貢献して喜んでもらえれば、いつか自社品の処方も増えるであろう」という思いがあったことは否定しません。
そして、よく医師からも「ここまでやってくれたんだから」「君だったら信頼できるから」というお言葉を頂き、新規採用に至ったり、処方拡大に繋がったりということも多々あったものです。
(*語弊がないようにお伝えしておきますが、今の時代ではこのような活動は恐らく厳粛に禁じられていることかと思います。あくまで昔々の話です。)
製薬業界のMRは私もそうでしたが、この返報性の原理をうまく期待しながら活動していると言える(言えた)でしょう。(私だけでしたら申し訳ありません…)
マーケティングにおける返報性の原理の活用事例
あくまでこの原理は、対相手とのそれなりの信頼関係があることが前提となるかと思いますが、例えば以下のような事例は考えられることでしょう。
例えば、それなりに貢献を施してきたとして、仮にどうしてもお客さんに買ってもらいたいモノやサービスがあった場合に、「ちょっと大きく出てみて、あえて断らせておいて着地点に落とし込む」ということはあるでしょう。
よく断られた後に「じゃあ、これ位だったらどう?」というやつですね。
実はもともとこの着地点を狙っていたというパターンもきっとあると思いますし、私もMR時代はよく使っていた手法です。
スーパーの「試食」「試飲」というのも時としてそのような効果を発揮することもあります。
ただ食べるだけ、ただ飲むだけと思われたらどうしよう…と思って買ってしまうというやつです。
こちらも前述の通り、「申し訳ないから買う」という思考に陥っていることは事実ですので、本当に気持ちの良い買い物ができたかと言われれば、時としてネガティブな場合もあります。
靴屋さんのディスプレイを見ていて、「宜しければお客さんのサイズの靴をお出ししましょうか?」と言われて履いてみると、どうも「やっぱりいいです」とは言いにくい気持ちにもなるでしょう。
これらには少なからず返報性の原理が働いていると言えると考えます。
大切なのは「申し訳ないと思わせない」こと
返報性の原理では「ここまでやってもらったのだからお返ししなければ」と思わせる心理作戦と申しました。
そして前述の通り、人によっては「申し訳ないから」という気持ちになっていることも事実です。
そこで大切なことは、真っ向から「申し訳ないから」という思いをさせているという素振りを見せないこと。
そしてそもそも、申しわけないという思いをさせないことも大切な取り組みです。
正確にいうと、「ありがたいから」「あの人から買いたい」と思ってもらうことが大切と言えるでしょう。
そのためには、それなりの貢献を施した直後に「購入の依頼」をしないことが大前提です。
「それが目的で貢献した」と直で思われてしまっては、その貢献そのものの効果が薄れます。
さらに相手からのお礼に対しても、「いえいえ、この手のことには慣れてますので」「むしろ私を選んでくれてありがとうございます」等、むしろお礼を述べるくらいが相手の申し訳なさを増幅させない結果に繋がるのではないかと思います。
結果的にお客さんはそれだけのお礼を必ずいつかは返してくれます。
返報性の原理というものは、すぐに結果を求めてしまうと相手から煙たがられるもの。
ちょっとした時間を置いて効果を追っていく方が良いでしょうね。
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