【中小企業診断士】製薬企業MR時代に学んだこと

  • 2023/08/29
  • 経営関連

こんにちは、中小企業診断士の諸岡です。

私は前職は内資系製薬企業に勤務しており、営業(MR:医薬情報担当者)を長きに渡り経験して参りました。

中小企業診断士として現在独立活動しておりますが、医療の分野にて経験してきたことを振り返りたいと思います。

MR(医薬情報担当者)とは

ご存じの方も多いかもしれませんが、製薬企業の中で医療用医薬品の営業担当者のことを「MR(Medical Representative)」と言います。

日本語では「医薬情報担当者」と言われ、入社後半年間ほど座学の研修を受けた後に、業界の資格試験である「MR認定試験」を受験します。

私が受験した2003年の頃は、「医薬品概論」「添付文書」「PMS」「薬理学」「薬剤学」「疾病と治療」という6科目が受験科目でした。

試験に合格しますと、MR認定証を取得することができます。

今はわかりかねますが、当時はMR認定証をもっていないMRは病院内での情報提供活動はしてはいけないという施設もありました。

そしてMRは、医療従事者に対して医療用医薬品の情報の提供と収集を行うことを業務とし、「価格交渉」や「物流配送」は担当しません。(これらは医薬品卸業者が担います)

また、MRが訪問する医療機関は、大学病院から地域の基幹病院、開業医と、担当エリアや担当形態によって異なってきます。

MRとして意識していたこと

私は自社製品の情報提供は当然何でも聞いてくださいと言えるMRでありたいと思っていましたので、入社してから毎日自社品の添付文書の細かい情報まで熟読していました。

今でこそ、他社品についての情報は提供してはならないというガイドラインができていますが、かつては他社品についてもよく勉強していました。

何よりMRは自社薬の情報提供者であって、顧客であるお医者さんや薬剤師さんが患者さんと接する上で必要とされる情報を提供することがミッションであり、「治療」には直接参画することはできません。

ただ、「患者さんのため」と考える思いについては同じベクトルにあったと認識しています。

また、生きている中で「お医者さん」「薬剤師さん」を「お客さん」として接することはなかなかない機会でしたので、ある意味色んな話をさせていただく中で、本当にステータスの高い情報や幅広い知識を教えて頂いたと思っています。

MR活動で成長したと思っている点

私はコミュニケーションスキルは比較的高い方ではないかと自分でも思っています。

「いつも笑ってる」とよく言われました。

MRとして医療機関を訪問していると、「プレゼンテーション」をする機会が豊富にあります。

自社品についての院内説明会や、講演会の前座で製品説明をさせて頂いたりと、比較的前に立って喋る機会に恵まれました。

もちろん、この機会は私にだけあったわけではなく、他の製薬企業MRにもある程度均等に与えられているものでした。

したがって、視聴者側の医師・薬剤師もプレゼンテーションを聞きなれているケースも多く、プレゼンテーションの質が問われていることは容易に想定できました。

特に20代の頃は、夜遅くまで会社に残って先輩たち、上司の人にプレゼンの練習に付き合ってもらいました。

時には院内説明会でも、「きみのプレゼンは長い!」とお𠮟りをうけたこともありました。

そういった経験を通して、私自身はプレゼンテーションスキルは非常に成長させて頂けたかと思っています。

MR時代の失敗談

今でも忘れない、当時の上司の前で「やってしまった」と大泣きした出来事です。

かつて社内で「この地域のこの病院は、新製品が採用されるのが一番最後の難関の砦」と言われていた地域の基幹病院を担当していました。

わりとイケイケドンドンだった私は、とことん攻めの姿勢で採用依頼をしていました。

採用申請をしてくれるであろうターゲットのお医者さんは非常に優しく、いつも笑顔で私の話を聞いてくれていました。

しかし、その病院はMRの「訪問規制」というものがあり、訪問することができる時間と場所がルールとして決められていましたので、あまり頻繁にはそのお医者さんとは会うことができなかったのでした。

そんな中、その周辺地域を担当していた開業医担当の同僚から「●●クリニックにその先生が非常勤で週1回きている」との情報を入手し、「とまどうことなかれ!」精神でがつがつクリニックに訪問して面談していました。

そんなある日、病院から会社に「上司の方いますか?」との電話が…。

どうやら訪問していたクリニックが、病院担当者が来ていることのクレームを病院にしていたようで、笑顔で優しい先生から烈火のごとくお叱りを受けました。

(今考えれば、かなりのマナー違反をしていたと思います)

結果、病院側から出入り禁止命令を受けて、新薬の採用以前に立ち入ることもできなくなってしまったという経験でした。

MRになって良かったと思う事

私は大手内資系企業に所属していましたので、全国転勤がありました。

千葉県・静岡県・大阪府と、太平洋側ばかりを経験させて頂きましたが、それぞれの地域にそれぞれの特徴をもったお医者さんや薬剤師さんがいらっしゃいます。

昨今では「チーム医療」とよく言われる中で、医師・薬剤師だけではなく、理学療法士や作業療法士、訪問介護ステーションやケアマネ事務所まで訪問させて頂くことも多々ありました。

何よりMRになって良かったと思えたことは、直接患者さんに治療を提供することはできないにしても、医療に貢献していたいという強い思いを仕事の生きがいにすることができたということだったと思っています。

私の属していた製薬企業は、どの診療科においても幅広く処方される領域の薬剤を取り扱っていたため、ほぼ全診療科に訪問させて頂いていましたし、様々な角度から患者さんの治療に貢献する思いを形にすることができたのではないかと思っています。

今でも活かされているMRの経験

現在、中小企業診断士として独立して約5か月になります。

少しずつお仕事に恵まれるようになって忙しくさせて頂いておりますが、医療の分野で活動させて頂くケースが少しずつ出てきております。

医療関係の製造業での研修講師や、新製品のマーケティング戦略策定支援、調剤薬局におけるセミナー講師、病医院の事業承継の相談などなど。

まだまだこれからですが、やはり20年の製薬企業の勤務経験から活かされることは多いと思っています。

そしてMRをやってきたからこそ、他の中小企業診断士とは違った目線でお手伝いができると思います。

(実はMR出身の中小企業診断士は比較的少ないと聞いています。MBAが多いのかな?)

私自身、20年の製薬企業の職歴を活かして、「患者さん目線」の想いをこれからも忘れずに、医療従事者の方々に様々な貢献をしていきたいと思います!