【経営コンサル】中期経営計画の作り方

  • 2023/12/09
  • 経営関連

こんにちは、中小企業診断士の諸岡です。

皆さんは「中期経営計画」というものを作ったことがありますでしょうか?

自社の発展のため、銀行融資のため、補助金申請のため、上場のため、など、様々な目的で中期経営計画というものは策定されます。

本日は中期経営計画の策定の手順について綴りたいと思います。

中期経営計画とは?

中期経営計画という言葉はよく耳にするかと思います。

ここでいう「中期」とは、一般的には3年~5年後までの期間を指します。

概ね5年計画というのが一般的ですね。

自社の将来を常に考えて、計画を立案し続けることは非常に大切なことです。

「未来は思い続けることで切り開かれる」というのが私の持論でもありますが、期限を決めてありたい姿をイメージして、それに近づけていくための計画と言えるでしょう。

ということで、手順としてまずは現状の整理と、5年後の自社の「ありたい姿」を考えることから始まります。

企業理念・ビジョン・ミッション

企業には必ず「創業者」という存在がいます。

創業者は、何かしらの夢や思いがあって創業することでしょう。

その創業の思いは、「全てはお客様のため」や「顧客ニーズを大切に」といった、世の中の人々に向けた自社の存在意義や、創業時の強い思いとして表現されることが多いです。

そして、この「理念」をもとに、「ビジョン」が策定されます。

「ビジョン」とは、「このような世の中にしたい」や「こんな世界を作り上げたい」といった、「社会貢献」的な要素で表現されることもあれば、「世界一健康な企業」や「日本一お客さんのためになる会社」といったような、内向き的な表現で描かれることもあります。

いずれにしても、「こんな世の中を我々は作りたい」や「自社はこうあっていたい」と考える「未来の姿」が「ビジョン」として表現されます。

そして「ミッション」。

ミッションとは日本語で「使命」などと訳されますが、「ビジョン」を成し遂げるために自社が成し遂げる使命を「ミッション」で表現します。

「絶えず挑戦し続ける」や「常に研究開発を怠らない」などですね。

そしてこれらの「経営理念」「ビジョン」「ミッション」というものは、そうそう日々変わるモノであってはなりません。

一本筋の軸を持ち続けるということは企業が存続していく上で大切なことです。

中期経営計画を策定する上で、5年後でも変わらない「経営理念」「ビジョン」「ミッション」を整理することが一番最初の作業となります。

現状分析に用いられる「SWOT分析」

何ごとも「モレ・ダブりなく」分析することが大切です。

そこで「モレ・ダブりなく」自社の現状を分析するツールとして「SWOT」というものがあります。

「S」: 自社の強み(Strength)

「W」: 自社の弱み(Weakness)

「O」: 自社を取り巻く外部環境の「機会」(Opportunity)

「T」: 自社を取り巻く外部環境の「脅威」(Thread)

人間だれしも「得手不得手」というものが存在しますが、企業も同じこと。

自社の強みとする部分と弱みとする部分は必ず存在しますので、その点をまずは整理します。

即ち、SWOTの「S」と「W」は、企業の内部環境分析です。

また、企業は様々な外部環境に晒されながら存在しています。

その外部環境にも「チャンス」となる内容と、「脅威」として働く内容が存在しています。

それらを「O」と「T」で整理します。

即ち、「O」と「T」は自社を取り巻く外部環境分析です。

自社の現状をモレダブりなく整理する上で、SWOT分析というものは非常に便利なツールとして活用されます。

ありたい姿」「あるべき姿」を考える

さて、中期経営計画は「5年後」までの計画であると申し上げました。

では、5年後に自社はどうなっていたいか?どんなことを成し遂げていたいか?という、「ありたい姿」を描きます。

よく「あるべき姿」という言葉で表現されることが多いですが、私は「ありたい姿」という言葉の方が夢があって好きですので、「ありたい姿」という言葉を用いています。

「○○地域で最もお客さんにサービスを提供している企業(シェアNo.1)」

「事業を息子に承継し、新たな事業を展開して世の中に貢献する企業」

などなど、定量的表現であったり、定性的表現であったり様々ですが、「5年後に自社はこうなっていたい」という姿を描きます。

戦略(方向性)を立案する

これまでは比較的「概念的」「理想的」な内容でした。

ここから少しずつ具体的な話にブレイクダウンしていくことになります。

「現状」を整理し、「ありたい姿」を描いたら、必ずそこには「ギャップ」というものが存在します。

ここでこの「ギャップ」を埋めるために「どのような方向性でいくか」という「戦略立案」に移ります。

といっても、戦略というのは「方向性を示すもの」であって、まだまだ具体性には欠けます。

例えば「新製品を開発する」や「新市場に参入する」といったレイヤーの話です。

しかし、この戦略が曖昧であると、この後の「戦術」も軸からブレていきますし、結果的に「ありたい姿」からずれが生じていくことになります。

戦術(施策)を立案する

ここから戦略を遂行するための具体的な施策ステージに入ります。

ここで大切なことは、例えば「新製品を開発する」という場合に、「新製品を開発する」という視点だけで物事を考えないことです。

新製品を開発するためには、人材を確保したり、それを販売するための仕組や従業員の教育も必要です。

さらには、新製品開発のための設備投資や、新製品を開発するための市場調査なども必要になっていきます。

企業は1人で存在している場合であっても、複数で存在していたとしても、必ず具体的に何をするかを考えるにあたって多角的な視点が必要になってきます。

複数の人材で構成されている企業であれば、役割分担も決めたりすることでしょう。

各部署、部門ごとに考えるべき「リソース」というものを決めていかなければなりません。

ここで用いられる便利なツールとして「BSC(バランススコアカード)」というものがあります。

戦略の遂行のために多角的な視点で戦術を決めていくためのフレームワークです。

BSCでは以下の視点で考えることが求められます。

BSC「顧客の視点」

まずは新たな新製品を開発するといった場合に、お客さんにとって満足されるものであるか、ニーズを満たすものであるかという視点です。

マーケティングの視点と言ってよいかと思います。

そしてここでは、「何を」「いくらで」「どの流通経路で」「どんなプロモーションで」という4つの視点で考えていくことが、顧客の視点に繋がります。

BSC「社内業務プロセスの視点」

次に、顧客視点を実現させるために、社内はどのような体制をとるべきか考える必要があります。

社内の業務プロセスをどのように構築・運用していくかといった視点です。

社内の業務プロセスというのは「バリューチェーン」と呼ばれる「自社の価値を創造するプロセス」というものが用いられます。

簡単に言うと、「調達」→「研究」→「開発」→「製造」→「出荷物流」→「販売マーケティング」→「アフターフォロー」という流れです。

また、企業にはこの一連の流れを支援する「人事」「総務」「情報」などの部門が存在していますので、それらの対策も検討が必要になってきます。

BSC「学習と成長の視点」

上記の「業務プロセス」を整えたら、はい終わり、では済みません。

必ず従業員の成長を目指した「育成」という視点が必要になってきます。

組織と人材の変化対応力や学習能力をどのように進化させるのかといった視点です。

従業員モチベーションを向上させるための仕組みづくりなども必要になってきます。

BSC「財務の視点」

さて、最後に計画は数値で示す必要があります。

数値はしっかりとした達成指標になりますので、5年後の「未来の決算書」は作っておきたいところです。

この段階では、今までのストーリーの中身が全て含まれた「結果」を数字で示すことになります。

具体的には、5年後の「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の財務3表で整理することが理想です。

全てに「一貫性」を!

未来の姿を描くことは、必ず企業を、人を強くします。

将来の夢は明確に描くことは非常に重要ですが、それを計画に落とし込むことでさらに実現可能性の確度は大きく上がります。

そして、今までの「企業理念」「ビジョン」「ミッション」の整理から、最後の「BSC:財務の視点」まで全てが一貫していることが大切です。

それぞれが独立して立案されていては、何の道しるべにもなりません。

そして何より、「夢」をふんだんに詰めた計画を立案することが大切ですね。

一晩合っても足らないくらいの熱い夢を込めて計画を立案することが一番大切です!

大谷翔平選手も形は違いますが「マンダラート」というものを用いて将来設計を描き、全てを実践してきたことで有名です。

夢は大きければ大きいほど、中期経営計画もワクワクするものになります!

是非、5年後の未来を描く計画書を作ってみませんか?

私も中小企業診断士として全力で支援させて頂きます!