【マーケティング】顧客心理に基づくマーケティング手法「ブーメラン効果」について

  • 2024/02/24
  • 経営関連

こんにちは、中小企業診断士の諸岡です。

皆さんは営業マンから「説得」される風な発言をされると、むしろ「買いたくない」という心理が強くなったりすることってありませんか?

恋愛のシーンでも、「好き」って言い続けられると、嬉しい気持ちがある反面、なんだか逃げたくなるという気持ちになりがちなものです。

これらは人間の持つ心理的な習性であり、マーケティングの場面でも活用されることがあります。

本日はこの「ブーメラン効果」について綴りたいと思います。

「ブーメラン効果」とは

ブーメラン効果とは、「相手を説得するとかえって逆効果になってしまい、説得した内容とは逆の行動や態度を取ってしまうという心理効果」のことです。

「説得」しようとすればするほど、相手は反発したくなり、説得された内容と逆の行動を起こしたくなるという心理が働くものです。

子供の頃、親から「勉強しなさい!」と言われると、「今やろうと思ってたのに、やる気なくした」という態度をとったことありませんか?

反抗期の子供というのは、親や教師に対してブーメランの嵐ですよね。

「説得」「指示」「命令」に対して、背きたくなる心理そのものが「ブーメラン効果」と呼ばれるものなのです。

なぜ「ブーメラン効果」が働くのか

では、なぜ人は説得されると反発して逆の行動をとろうとしてしまうのでしょうか。

親に「勉強しなさい!」と言われると、なぜ勉強したくなくなるのか、不思議に感じますよね。

そもそも人間の思考には、「自由でいたい」と考えてしまう習性があります。

そして説得されることで、その「自由」の領域を侵害される危機感を感じているのです。

また、人それぞれ「譲れないもの」ってありませんか?

そして、もしその譲れないものを譲ることになるような説得をされると、特に反発精神が生まれてきませんか?

営業と言うシーンを例に挙げると、自分が顧客の立場なのに、営業マンから「お客さん、絶対買うべきです!」という発言をされると、買いたくなくなるのはもちろんのことながら、こんな気持ちになりませんか?

「なぜ、あなたに『べき』って言われないといけないの?決めるのはこっちだから!」

それだけ人間には「説得されたくない」「自分で決めたい」という心の底の思いが強い生き物なのです。

マーケティングにおける「ブーメラン効果」の活用

上記の通り、「説得」をするとお客さんは反発したくなり、販売機会を失ってしまいます。

そもそも今の時代、「押し売り」は非常に効果が弱いもの。

効果が弱いもなにも、逆効果となり、「もう来るな!」と言われる事態にも繋がりかねません。

マーケティングの領域では、このブーメラン効果を考慮して、逆に活用するというテクニックがあります。

「決してこの本は読まないでください!」

「この商品は注文しないでください!利益率が低すぎて、店がつぶれます!」

これはブーメラン効果の更なる逆をついた宣伝手法です。

本当に買ってもらいたくなかったら店頭にこの本は並べませんし、飲食店舗でもそんな商品は売らないでしょう。

これらはまさにブーメラン効果の逆をついた、「興味を引く作戦」と言えるでしょう。

次に、人は説得されることが嫌いであると述べました。

そこであえて強引に「説得」せずに、「導く」という手法を取ります。

「こんなシーンに出くわしたことありませんか?」

「私もあるんですが、まあ苦労しました」

「でももう悩むことはなくなります」

「気になる方はこちらをクリック!」

ここでは「問題提起」→「共感」→「解決策」という、顧客の気持ちになって導くという手法を取っています。

いずれにしても、最終的に「購入する」という意思決定は顧客本人がするもので、販売する側としてはあくまで「提案」しているに過ぎません。

「お願い」も一言も発していませんし、もちろん説得もしていません。

最近の営業手法としては、「強いクロージング」は私は逆効果であると思っています。

最終的な意思決定権者が顧客であることを、まずは忘れずに押さえておくべきでしょう。

製薬業界における「ブーメラン効果」

私が前職の製薬業界でMR(医薬情報担当者)をしていた頃、ブーメラン効果については医療従事者とのコミュニケーションでは非常に気を付けていました。

医者という国家資格保有者に対して、いち製薬企業MRが「説得」なんて、そもそもできるものではないという「力関係」をまずは理解していました。

ただ、私がたったひとつ、MRとして意識していたことは以下のことです。

「この疾患や症状に対しては、弊社の薬ではお役に立つことができません。」

「競合他社の●●●という薬の方が患者さんのお役に立てる可能性があります。」

「もし良かったらその企業のMRさんをご紹介します。」

これは医師にはかなり響いていました。

つまり「使ってほしくない」「購入しないで欲しい」という点については、説得的な表現で伝えていました。

なぜなら、自社の医薬品のパフォーマンスが発揮されず、結果的に評価が落ちると思っていたからです。

負けず嫌いで、とにかく使ってもらいたいと考えるMRは、「その症状に対する効果のデータはありませんが、一度試してみてもらえませんか?」と、意地でも使ってもらおうとする人もいます。

これは、今ではプロモーションガイドライン違反にもなりますし、何よりそんな意地は不要。

余談ですが、医者も医者だと思うことがあります。

保険適応が認められていない領域の疾患や症状に対して、「効く?」とMRに聞いて、「その分野についてはデータがありませんので効くとは言えません」と返したら、「だったら使えないね」と発言する人がいます。

そういう医者には訪問する必要ありません、製薬会社をなめてます。

話がそれてしまいましたが、総じて自社製品のメリットばかりを伝えるのではなく、あえて弱みやデメリットを伝えることで、ブーメラン効果は弱まって、「説得」から「背中を押してくれる」に変わっていくということですね。

最後に

マーケティングというのは「顧客心理に基づく」ということが最前提です。

そしてマーケティングの目的は「売れる仕組みを作ること」と言えます。

今の時代は「良い商品・サービスが売れる」ではなく、「顧客が欲する商品・サービスが売れる」という時代です。

説得が必要な商品・サービスは、そもそも顧客が欲しているモノとは言えない可能性があります。

顧客心理はどのような方向を向いているのか?

一度整理してみても良いかもしれませんね。

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